日本での活動60年を迎え、皆様への感謝をこめて
自立を目指す障がい画家の日本での活動が、2021年に60年を迎えました。
多くの皆様のご協力によって、活動が継続されていることに深く感謝申し上げます。
日本での活動60周年を記念し、日本の障がい画家たちそれぞれに代表作や好きな絵を選んでもらい、その絵に対する想いなどを聞きました。
飯原 孝
新潟県/口で描く画家
「ミニチュアダックスフンド」
この絵は、毛並みを描くのに苦労しましたが、多くの方に喜んでもらいました。ある絵画展で実演をしている時に、この絵が好きだという幼い姉妹がわざわざ会いに来てくれて、手紙と一輪のお花をいただきました。画家として今までやってきて良かったと思う一枚です。
石橋 亨弘
大阪府/口で描く画家
「海底から見た風景」
この「海底から見た風景」は、初期の作品です。見たことがない視点で描いてみました。その時々で、どんな作品に仕上がるか、私にもわからないので、私自身も楽しんで描いています。
梅宮 俊明
埼玉県/口で描く画家
「午前6:58(横浜)」
私が協会に所属して10年以上がたちました。協会に入り、いろいろな活動をさせていただき、本当に良かったと思います。他の画家たちとの交流や、展覧会へ来ていただいた人たちとの出会いは、私にとっては素晴らしい宝物です。これからも、実演などで皆様にお会いできる日を楽しみに、日々精進してまいります。
この横浜の絵は、クリスマスの時に友人とライブに行ったときに、泊まったホテルから撮った写真をモチーフにしました。ホテルから見た朝焼けが綺麗で、どうしても描きたいと思い選びました。友人たちと一緒に見たライブも思い出して、描きながら楽しくなりました。
浦上 哲也
山梨県/足で描く画家
「クリスマスツリー」
この絵は、クリスマスツリーは見ながら、華やかさを表現できればと描きました。
大井手 麻紀
東京都/口で描く画家
「無題」
絵のレイアウトは、描いているうちに最初に思い描いていたものと変わることもしばしばです。いつも「仕上がるのかしら…」と思いながら描いています。
黒木 洋高
宮崎県/口で描く画家
「カーネーションの君」
この絵は、もうずいぶん前に描いた絵です。6号キャンバスまでしか描いたことがなかったのですが、15号の大きさに初めて挑戦した作品でした。パステルカラーで、想像だけで描いてみました。
古小路 浩典
東京都/口で描く画家
「バースデー」
家族から独立して、ヘルパーの方からの生活支援を受けながら一人暮らしを始めた頃、初めて猫と一緒に暮らすことになりました。ある春の私の誕生日に、協会からお祝いの花束をいただきました。とても綺麗に生けてもらったので、記念に絵に描こうと思い、ヘルパーさんと賑やかに撮影をしていました。すると、この家のもう一人の主があらわれ、身のこなしも軽やかに花瓶の前でポーズをとるのです。普段であれば、なかなかこちらの願いどおりにはカメラに収まってくれない気分屋なのに…しばらくは堂々と正面を向いて身動きもせずに、それは立派にモデルをつとめてくれました。そんな楽しい春の日を思い起こす作品です。
佐藤 拓也
福岡県/口で描く画家
「夕陽に向かうバラ」
協会に所属して長くなります。正会員を目指し努力しているのですが、僕には足りないものがあるようです。今回の作品は、アシスタントがいなくなり困っていた中、新しいアシスタントが見つかって、再起の気持ちを込めた作品です。この絵が評価されることを願っていますが、ここ数年、アートダイアリーに自分の作品が掲載され、家族をはじめ、同じ障がいを持つ仲間たちにも喜ばれています。また、障がい者の芸術文化活動を企画運営するグループを立ち上げ日々奮闘しています。
田中 潤也
愛媛県/口で描く画家
「オランウータン」
この作品は、オランウータンの子供が順風満帆に生活を送っている。おてんばな子供がいろいろなものに興味を持っている。そんな純粋な気持ちを描きました。
築地 美恵子
埼玉県/口で描く画家
「あざみの花瓶(夏野より)」
夏の野に咲く花々を集め、お気に入りの花瓶に生けました。
小さな花の記憶が、あなたの胸にも夏野の風を運んでくれるでしょう。
再び、夏の野山の爽快感を満喫できる日が戻ってくることを祈って…。
西岡 良介
広島県/口で描く画家
「ヤマネ」
この絵に描かれたヤマネは、メジャーな生き物ではなく、一般の眼に触れることなく、山奥の樹の上でひっそりと暮らしているイメージがあります。だからこそ、より一層神秘的でロマンチックな感情を掻き立てられます。こんな貴重な生き物が、たくさん暮らせる自然を大切にしたいと思います。
水村 喜一郎
千葉県/口で描く画家
「夕映えの運河の工場(川口)」
代表作や自分の気に入った一点を選べ、と言われても困っちゃいますね。出来不出来は別にしてそれぞれに思いを込めて描いているつもりですから。描けるものしか描けないですから。ただ自分自身の今までの絵の流れをみると主にチョット切ない寂しい感じの風景を中心に描いてきたように思います。ですから「夕映えの運河の工場(川口)」などは、どうかと思いました。
「夕映えの運河の工場(川口)」について
「キューポラのある街」という映画が昔あった。おそらく自分が16、17才の頃だったと思う。キューポラとは鉄の溶解炉のことで、この映画は鋳物の街、埼玉県川口市が舞台の青春ドラマで、貧困、親子の問題、民族、友情などを描いていたような気がする。あの当時の自分の問題とも絡めて見ていたので、うっすら覚えている。ところでこの「夕映えの運河の工場」も芝川沿いのキューポラの工場である。たまたまこの川沿いを通った時に「描きたい」と思った。その後、数年前に行ってみたら懐かしい面影は全くなく、ただただ現代そのもののマンションが林立していた。
南 栄一
長野県/口で描く画家
「友と歩いた上高地」
夏休みに友人と上高地を訪れました。曲がりくねった道といくつかの暗いトンネルを抜けた先には、すばらしい世界が広がっていました。
爽やかな空気感を表現したいと思い描きました。
六鹿 香
愛媛県/口で描く画家
「落ち葉」
魔女には怖いイメージがありますが、緩くて可愛い雰囲気にしてみました。たくさんの色を塗り重ねてグラデーションを作っていくのが楽しかったです。
森田 真千子
大阪府/口で描く画家
「楽しみなクリスマス」
この絵は、協会本部が、「Congratulation」をテーマにコンテストを開催した際に提出した絵です。制作期間は2年以上かかっています。途中気が乗らず保管しながら描いていました。ツリーや小物類は、我が家で集めたものです。クリスマスの温かい飾りつけされた部屋で、サンタクロースの登場を待っている少女を描きました。50号の作品で、大きいサイズの場合、下に座って描いているため、届かない部分はキャンバスを回してもらって描き切りました。これからも、喜怒哀楽や空気感が伝わる絵をいろいろな手法で描いていきたいと思っています。