画家の一言 ~2023年 秋冬~

私の生きる道 「あふれ出す想いを短歌に込めて」

口で描く画家 森田 真千子


「親子のふくろう」
1956年4月兵庫県生まれ。生後10ヶ月のとき、高熱による脳性マヒに罹り、両手は全く使えず、体幹マヒ、下肢マヒがあります。ものごころがついたときには既に重い障がいを負っている身体でしたが、生来の性格なのか、関西で生まれ育ったためか、障がいにめげず、明るいキャラクターで、人とのかかわりが大好きです。協会が主催する展覧会や課外授業にも積極的にかかわり、地元大阪周辺はもちろん、どこへでも車椅子で出かけるバイタリティーあふれる女性です。
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興味があった絵で自立できれば


「ふくろう二羽」

養護学校卒業の時、将来への不安がいっぱいでした。協会に所属している画家たちから「口と足で描く芸術家協会」の存在は聞いていましたし、養護学校で口での描画は始めていました。だから、絵を描くことで自立ができるのではないかと思い、まずは協会へ入って、奨学生として頑張ってみたかったのです。審査は厳しく、3回目にやっと奨学生として認められることになりました。そこからは描画にまじめに向き合ってきたと思っていますが、自分では思ってもいない身体の動きを止められず、思い通りの線を描くことが難しいときがたびたびあります。そんなときは身体を縛り付け、動かないように固定しながら描き続けます。また、大きなサイズの絵を制作するときは、キャンバスを上下左右、様々に動かしながら描きます。上にある空を描くときでも、向きを逆さまにして描いています。

大好きな「ふくろう」をモチーフに


「自分に限界は決めない
それが前向きに生きること 夢繋ぐこと」

幸運の象徴と呼ばれるものは多々ありますが、フクロウもその一つで、世界中の様々な神話にも登場します。日本でも、フクロウは「不苦労(苦労がない)」、「福朗(福が来て喜ぶ)」、「福老(豊かに年をとる)」と、その名前から縁起物とされています。そんなフクロウを描くのが大好きです。みんなが幸せになれるよう願いを込めて、様々なフクロウを描いています。フクロウの丸みを帯びた羽を描くため、一本の線をちょっとカーブさせて丸く引きます。何本も何本も重ねて描き、フクロウの羽全体ができ上がります。本当は、丸みを帯びた線を描くのが描きやすかったのだと思います。繰り返し繰り返し、ちょっとずつちょっとずつ線を引いていたら、何だか可愛らしいフクロウに見えてきたのです。いつしかこの方法でいろいろなタイプのフクロウを描くようになりました。ちょっとつぶらな瞳のフクロウ、私も大好きです。

恩返しができれば


「鯉と蓮」

協会が主催する全国各地のイベントや学校の課外授業等には積極的に出かけます。私はおしゃべりも大好きだし、とにかく人と交わることが大好きです。歩くことはできませんが、かなりフットワークが軽いほうだと思います。(笑)
イベントでは大きなサイズの絵は描けないので、色紙の制作実演を行っています。あるとき、私の実演を見て「手ではなく、口でもこんなふうに上手に描けるのですね」と声をかけてくれた方がいました。その方は何か悲しいことがあったのでしょうか、自分も前向きに生きなければと決意を新たにしたような面持ちでした。私は、手を自由に動かすことも、歩くこともできませんが、私が描いている姿や絵画を見てくださって、何かしら感じていただけたら、それは私にとって大変嬉しいことです。

あふれる想いを色紙絵に添えて


「人生って苦しいよねつらいよね
でも笑顔つくれば夢が希望が見えてくる」

大きな作品を描くときは、やはり構想を含めて何日も何日もいろいろ考えている自分がいます。もちろん作品の完成には何ヶ月もかかります。でも、実演の色紙絵は、ちょっと簡単に描く自分がいて、絵に対する自分の姿勢に引け目を感じていたときがありました。この絵では自分の想いが伝えられない、何かできないか、そんなことを考えていたとき、ちょっとした言葉を色紙絵に添えてみました。十代の頃から、日々感じていたことを自由律短歌として書き溜めていたものがあったので、色紙絵と短歌を組み合わせてみたのです。絵と共に自作の短歌を書いた色紙絵は、私が伝えたかった想いに少し近づいたような気がしています。感じたことをありのままに、決して上手な短歌ではありませんが、これは、本当に私の内からあふれ出た想いなのです。

出会いと感謝と


「大阪中央公会堂」

私にとっての絵画は、生きている証であり、様々な方々との出会いのきっかけとなってきました。協会が主催する展覧会やイベント、また学校へ出向いての課外授業での生徒の皆さんとのふれあい、私は様々な方々に支えられて描くことができています。ここ数年はコロナ渦でもあり、多くのイベントが中止になってしまいましたし、その前でも、やはり年に数回しか皆さんにお会いする機会はありませんでした。私からもぜひ様々なことを発信したいと思い、数年前から、兵庫県宝塚市に小さな小さなギャラリーを開いています。私が大好きな絵の数々を展示していますので、お買物のついでにでも、ちょこっと寄っていただけたらとても嬉しいです。これまでに得た感謝の気持ちを忘れず、これからも、絵画作品に多くの夢や生きている歓びを描いていきます。

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