画家の一言 ~2020年 秋冬~

今年は、思いもかけない事態が世界中を駆け巡りました。予期せぬ新型コロナウイルス感染拡大により、皆様の生活様式も一変されたことと思います。社会が新しい日常生活を模索する中、協会の障がい画家たちもいろいろと考える時間を持ちました。この秋冬では、コロナ禍で影響があったことや、現在の自身の状況を思いのままに語ってもらいました。

築地 美恵子
東京都/口で描く画家 プロフィール


「カーネーションとスイトピー」
新作、母の日に向けて描いたのかな?
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全身マヒによって咳ができない私は、普段からインフルエンザなど、いわゆる風邪症状が重症化しやすく、気管支炎や肺炎に苦しみます。しかし、咳のできない苦しみは、頸髄損傷に精通している専門病院でなければ、なかなか理解されません。今回の未知の新型コロナウイルス感染症の蔓延は、本当に恐ろしく、不安な気持ちを友達に聞いて貰ったり、反対に友達の話に耳を傾けたりしました。
公共交通機関の利用は控え、通院など、どうしても出かけなければならない場合は、安全を考慮して窓開放の介護タクシーです。日常生活では歩いて移動できるエリアしか出かけません。こまめな消毒を心がけて、ひたすら自粛生活です。感染拡大を受けて、平安文学を学ぶ、大学の講義がオンライン授業になりました。通学できないのは寂しいですが、感染リスクを考えたら仕方ありません。

前期の課題提出まで我慢していた、NHKで放送されていた『アシガール』の原作漫画、夏休みに入りやっと読めました。また、今は元気が出るよう黄色いオンシジウムを描いております。細かい花がたくさん咲いているので、仕上げまでしばらく時間がかかりそうです。後期の授業の準備もあり、充実したステイホームになりそうです。幸い、ヘルパーさんや看護師さんは通常どおり訪問してくださいますが、いかに多くの人々に支えられて生活が成り立っているのか、改めて考えさせられる機会となりました。感謝の気持ちを胸に、今日も口に筆をくわえて描こうと思います。

黒木 洋高
宮崎県/口で描く画家 プロフィール


「蝶ネクタイの猿」
かわいい動物だけじゃなく、こんな絵も
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コロナや豪雨、地震、国際情勢を考えると日本は、いや地球はこれからどうなるのだろうかと心配になる。そんな中にあって重度障害の私は何もできないが、どういう状況下にあっても精一杯自分の命を全うしようと思う。私は絵で何かを表現できるほど画力もなく、協会の中にあっても無力に等しいが、絵は継続して描き続けて行きたい。それがある意味私の命の全うでもあり、またそれによって、私に関わる皆を安心させる事もできる。何で命を落とすかわからない時代に、重度の障害を持っていても、皆に支えられながら絵を描き生きていける幸福。大病を患ってから、なかなか以前のように自由に絵を描く事はまだできないが、早く自由に描けるように、そして少しでも協会に貢献できるように頑張って行きたいと思います。

田中 潤也
愛媛県/口で描く画家 プロフィール


「暗闇に潜む」
周りの人の温かい心を色で表現
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僕は去年、今年と入退院が続き、そんな中、コロナの感染拡大により、家族の面会も禁止になりました。絵を描けない悔しさや、家族とさえ会えない事を不安に思っていた中、気付けば医療従事者の方々が、メンタル的にも仕事的にも大変な時なのに、いつも笑顔で寄り添ってくれていました。そのおかげで、僕は心も体も元気になり退院をする事が出来ました。
自宅に帰り、描きかけの作品を仕上げました。それが『暗闇に潜む』です。初めはただ真っ暗な夜に、月に照らされたネコが静かに座っているといった感じだったのですが、入院中に医療従事者の方からいただいた温かい心などを、いろんな色を使って表現してみました。僕には大好きな言葉があります。『明けない夜はない』。いつかみんなが笑顔になる日まで、もう少し…。そんな思いで描いた絵です。

山口 かほる
東京都/足で描く画家 プロフィール


「ストロベリーフィールド」
新作より
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世の中がコロナコロナで大騒ぎになり、遠いところへ出かけることもできなくなりました。私は金沢の個展が2回もつぶれてしまって、本当に残念です。それとともに、治療のため1週間入院するということもなくなりました。病院への診察もこわごわ行くようになり、マスクをかけなければどこへも行くことができなくなりました。
そのかわり、絵を描く時間が多くなりました。また、飼い猫の未来君は、私が家にいるので喜んでいます。1週間に1回、必ず教会へ通っていたのですが、教会も閉鎖されてオンラインにかわりました。仲の良いお友達に会えなくなったのはとても寂しいけれども、オンラインという、考えもしなかった礼拝ができるようになって、面白いなと思いました。
そんな中、7月に地元で個展を開け、お客様に非常に喜んでもらえて、私も嬉しかったです。世の中、悪いことばかり起きるわけではないということを改めて知ることができました。今は、秋の個展に向けて頑張って描いております。

南 栄一
長野県/口で描く画家 プロフィール


「横浜ナイトビュー」
2020秋冬カタログの表紙と、クリアファイル№532の絵
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新型コロナウイルスの感染が各地に広がり始めて、外出することが少なくなっています。感染が一時治まってきたころ、マスクを着けてもらい買い物に出かけましたが、見える風景は何も変わっていないのに、車から降りてエレベーターのドアが開いたとき、中には足のマークが4つありました。そのとき、この世の中が変わったことを感じました。これからは、常に不安な気持ちを持って生活していかなくてはならないのかと感じました。私は、どこに希望を持ったらいいのかと考えました。しかし、絵を描いているときは、コロナウイルスのことを忘れていることに気づきました。今できることを第一にしていくことが、大切なことだと思いました。
そして、毎日私の生活を支えるために来てくれる介助者のお一人お一人が、このコロナ禍の中で、気を配りながら生活し、私のところに来てくれているのだと、感謝の気持ちを忘れないようにしたいと改めて思いました。

飯原 孝
新潟県/口で描く画家 プロフィール


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まず、コロナ禍の中、私の生活を支えてくれる医療従事者、福祉関係者に感謝します。5月にある展覧会も中止になり、沢山の人との出会いができなかった事を残念に思います。友人知人家族とも会えない状況の中、私の活動はリモート学習になり、絵のチャレンジ動画を投稿したりしていました。激励のメッセージを頂いたりして、リモートやSNSの良さもあります。でも人恋しくなり、メンタル面を維持するのは難しいと思いました。今はネコや犬の絵や、静物を描いています。こんな時だからこそ、みなさんがホッとできる絵や、家族の絆のような絵を描いていこうと思ってます。みなさん辛抱はもう少しです。明るい未来を思い描いていきましょう。

森田 真千子
大阪府/口で描く画家 プロフィール


「鳳凰」
緊急事態宣言中に、チャレンジ動画に投稿した際に描いていた絵
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今年の新型コロナの発生・拡大によって、世界中で生活が一変してしまいました。
私自身も実演や講演が減り、あまり外出しない分、動きが減っているため、体調の変化など不安は尽きませんが、絵を描く情熱はより一層高まって描き続けています。
また、絵画制作風景を動画にして、SNSなどで見ていただくなど新しいチャレンジもしています。
Webなどを通して海外のメンバーとも繋がっており、『みんな一緒に頑張っている』という意識も強くなっています。
私はこれからも出来る限りのことは続けていきますので、引き続きのご支援をお願いします。

石橋 亨弘
大阪府/口で描く画家 プロフィール


「ボルタリング」
オリンピック開催に際し描いた最新作
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この春、緊急事態宣言が解除されるまでは、外に行くのは買い物だけで、慌てて帰ってくる毎日でした。障がい者スポーツとして取り組んでいるボッチャの練習もなく、今年の大会はすべて中止になりました。でも、家にいる時間がふえたので、絵の制作的には良いかなぁと楽観的に見ています。
今、私にできること……それは、夢、希望、愛、癒やしなどを感じられる作品を数多く描くことです。少し大口を叩いています。うまく表現できるかどうかはわかりませんが、皆さんに喜んでいただけるような作品を描いていきますので、今後も応援をよろしくお願いいたします。