最後に美術館の前に集まり、全員で記念撮影。情熱をもってまた走り出すみなさんにとって、新たなスタートを切った瞬間です。

咲き始めた桜のもと、画家たちがそろって記念撮影。

帰っていく仲間たちを一人ひとり見送る。「今日はありがとう! これからも頑張ろう」

パーティーが終わり、ほっとひといき。改めて館内をゆっくりと歩く。
「今日来られる画家は2、3人かなと思っていたら、10人も来てくれた。感動したよ。みんな出掛けることも大変で、なかなか会えないからね。会えてよかった」
パーティーが終わり、仲間たちを見送った水村さんがつぶやきます。
「みんな、一度は絶望したこともあるだろう。だけど、一生懸命だ。生に対して、思いの深さがある」
そして改めて、協会の仲間たちの作品を語ります。
「みずみずしい、素直な色」「描きたくて描いているのが伝わってくる」
とにこやかに語っていたのもつかの間、
「うーん、これは背景がないほうがいいな」「ここの影が違うんだなあ」「もっと勉強して、もっと描かないと」
と、一つひとつの作品を真剣に評し始めました。
「ダメだ、絵の話となると、やっぱりあれこれうるさくなっちゃうな」
と、思わず苦笑い。その表情には、画家として仲間と向き合う、厳しくもあたたかな思いがあふれています。
パーティーの挨拶で、「闘い合っていきましょう」と仲間たちに呼びかけた言葉通りに、もう次の目標を見つめている水村さん。協会展が開催された一室は、4月21日から水村さんの子ども時代、青年時代に描いた作品を展示するスペースに変わります。
当時のことをたずねると、意外にも
「絵は好きだったけど、学校で描く絵はきらいだった」
とのこと。
「吊るされた鶏」
高校時代の作品。かわいがっていた鶏が食卓にのぼることになり、最後の姿を汗と涙にまみれながら一気に描き上げた。
「黄昏れる海─落日の海べ」
酒田の海を描く。いつまでもその前にたたずんでいたくなる、郷愁に満ちた作品。
「学校に行くのは好きだったけどね、友達と遊びたかったから(笑)。ただ、絵の授業で勝手にテーマを決められるのがいやだったんだ。俺は描きたいものだけを描きたかったから。それは今も変わらない。そんなふうに、ずっと『不良』の気持ちを持ち続けたい。紳士じゃ、絵なんか描けないから。俺はこれからも、誰にもこびずに描き続けるよ」
「青いベストの酔っぱらい」
マドリードの蚤の市で出会った骨董屋の親父さん。朝から飲んで上機嫌。
「柿」
代表作「柿」は、夕陽を閉じ込めたような深い色合い。
30年ほど前の展覧会で、当時の皇太子ご夫妻がご覧になった作品。その後、美智子さまから御所に飾る絵画のご注文を受けた。
幼い頃から現在まで、全60点にこめられた情熱に出会える、水村喜一郎展。
「俺にとっての絵は、生きる道すじを証明するもの。まさに『画道精進』(がどうしょうじん)。こうとしか生きられない人生なんだ」
燃えるような激しい青春の思いとともに、水村喜一郎美術館という物語の第2章、始まりです。
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次回は代表的な作品とともに、幼い頃や青春時代など、水村さんの情熱の原点を探っていきます。