
協会70周年を迎えて
アルヌルフ エイリッヒ シュテッグマン
Arnulf Erich Stegmann(ドイツ)
1912年3月生まれ。2歳の時に脊髄性マヒ(ポリオ)にかかり両手両腕の自由を失った。教師たちは彼の恵まれた芸術的才能に気付き、勉学を促した。油彩、水彩ともに技術は高度な水準に至った。また、石にペンで描くこと、丸のみ細工、リノリウム彫り、版画、彫刻などは、全て口にくわえた道具で制作した。生涯を通じて展覧会活動は目覚しいものがあり、作品はドイツ・ミュンヘン・シンシナティ美術館をはじめ、個人のコレクション、ギャラリーなどに所蔵されている。1956年に協会を創設、終身初代会長であった。1984年9月没。

始まりは両手の不自由な一人のドイツ人から
ドイツ人のA.E.シュテッグマンはポリオに罹患し両手が不自由でした。当時、きちんと働ける場所もなく、路傍で、器用に口に絵筆をくわえ似顔絵を描いて生活の一助にしていました。噂を聞きつけ、彼のもとに、様々な事情で両手の自由を失った障がい者たちが集まり、見よう見まねで絵筆を動かし、絵を描くようになっていきました。そしてそんな障がい者たちを、何とか支援したいと思う仲間たちも集まってきました。1956年、「口と足で描く芸術家協会」がリヒテンシュタイン公国に設立されました。障がい画家は口や足に絵筆を携え、絵を描きます。その絵をポストカードに複製し皆様にお買い上げいただく、そんな一歩から協会は始まりました。シュテッグマンは初代会長となり、その後組織として体系化されていきます。シュテッグマンは、自国だけではなく、世界中、あらゆる国の両手の不自由な障がい者に活躍の場が提供されることを願います。その後、活動は、まずアフリカ大陸へ広がっていきます。協会を設立した仲間たちは、世界中の両手の自由を失った障がい者のために、この活動を世界へと広げるべく尽力します。
日本での活動は1961年から~たくさんの苦労もしました~
1961年、日本で初めて「口と足で描いた世界の美術展」を東京で開催します。シュテッグマンの友人、やはりドイツ人のベルトホルト・オールメルが来日し、日本での活動を広めていきます。両手の不自由な障がい者の自立のため、まずは協会の活動内容を日本の人々に知ってもらい、協会へのサポートを呼びかけていきます。
こんなこともやってみました
「口と足で描く芸術家協会」とはどういった団体なのか、きちんとした組織であることを日本の皆様に知ってもらうため、オールメルは、当時のNHK番組「私の秘密」にも出演しました。珍しい体験や特別な才能など、ある秘密を持った一般人が登場し、その秘密を当てるクイズ番組ですが、オールメルは、協会に所属している口や足で絵を描く人たちを紹介、そして協会の存在を多くの人に知ってもらうために奔走しました。
それと並行して、実際に両手が不自由で支援を必要としている日本の障がい者に、協会の意義を伝え、ぜひ協会に参加してもらい、一緒に活動しようという呼びかけも行います。まずは両手の不自由な障がい者を探し出すことから始まりますが、ドイツから遠く離れた日本、もちろんオールメルは日本語を話すこともできません。通訳を兼ねて一緒に活動してくれる日本人スタッフと、活動をともに担ってくれる障がい者を探し歩きます。
まさに一期一会


オールメルは、人づてに、両手が不自由な人がいると聞けば、その人に会いに行き、協会の意義を伝え歩きます。
そして出会ったのが木村浩子です。彼女は1937年生まれ。1歳になった直後の高熱のために脳性小児マヒとなり、言語障がい、両手右足硬直の重度障がい者となりました。長い施設での生活を経て、自立を目指し、わずかに動く左足で文字を独学し、習得。可能性を求めて足での短歌、編み物、水彩画などに次々と挑戦し、絵画に生きる道を見出しました。



「日本」での活動を通して
日本では、学校や会社、そして個人の皆様と、様々な方々に、春夏・秋冬の年2回のカタログを通して、世界中の障がい画家が描いた原画からさまざまな商品を複製し、ご購入いただくというスタイルを確立していきました。諸外国ではポストカードが主ですが、日本では、皆様に喜んでいただけそうな商品を多数製作して、皆様に選んでいただいております。
そして時は流れ、オールメルも亡くなり、同じ志のもと、一緒に一時代を築いた日本人障がい画家も既に何人か亡くなりました。しかし、また新たな障がい画家へとバトンは繋がれています。
「SELF-HELP,NOT CHARITY-慈善ではなく、自立-」を掲げて
「誰一人取り残さない」は、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の核となる理念です。格差や貧困をなくし、最も脆弱な立場にある人々が平等に人権と豊かさを享受できる社会を目指すための誓いです。協会は「SELF-HELP,NOT CHARITY-慈善ではなく、自立-」を掲げ、一時的な施しよりも、自身の力で働き、経済的・精神的に自立する生活を目指しています。皆様にはこの活動を知っていただき、もちろん支援には感謝しつつ、このような活動をしている障がい画家が世界中にいることに目を向けていただければと思います。そしてこの活動がこれからも長く続けられるよう見守っていただけることを、障がい画家一同願っております。