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土屋 信  山梨県  口で描いた

1935年生まれ。

25歳の時、水泳中の事故のため首から下の全身がマヒし、寝たきりの生活となった。

以後、短い生涯全てをベッドの中で、口での絵画制作に没頭して送った。

努力の人でした。

1986年51歳、没。


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「私は受傷して25年になり、この病院で一番長い入院患者となりました。医師、看護士、一般職員の方々は大勢入れ替わりました。しかし皆さんが一貫して私の絵の勉強に深いご理解と特別のご配慮を示し続けてくださいました。

振り返ってみますと、これまでに幾度も残忍な運命が私の体を見舞いました。健康な時には全く想像できなかった苦しみの連続でした。

この病院にはたくさんの見学者がいつでも見えました。その都度私の現状と絵の勉強についての話し合いがあり、多くの暖かいご支援を頂きました。その方々にお礼の気持ちを込めて私の絵の絵葉書などを少しずつ差し上げました。それがまた私を紹介する結果となり、私の絵に関心を持ってくださる人々の輪は大きく波紋のように広がりました。

 

私の傷は家族全員を渦中に巻き込みました。家族の犠牲の上に、献身的な看護が続きました。過労から母が他界しました。精神的、物質的な大きな負担を担ったまま、家族は一言の不満も言わず尽くしてくれました。

これまで誰にも話せませんでしたが、私の心の中はとても冷たく重く暗く閉ざされていました。やり場のない心を忘れるように私は絵を描きました。その絵で私は協会の奨学生となり、後に会員にもさせていただきました。協会は私の心の暗黒の世界を変えた暖かい太陽です。家族にも少しずつ償いが出来るようになりました。私は協会が与えてくれたものを決して忘れません。

生命が燃え尽きる最後の最後まで絵を描き続けたいと思います。」

 

 

上記は土屋 信が亡くなる前に、協会へ宛てた最後の手紙です。

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