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南 栄一
長野県
口で描く
1955年8月長野県生まれ。
高校3年生の時、柔道の試合中に事故で頚椎を損傷し、四肢マヒとなる。 3年間の入院後自宅に戻り、ベッドと車椅子の生活を始めた。
入院中にリハビリで始めた絵を描くことと、絵画を通して出会った新しい世界が、毎日の生活の目的と楽しみになった。始めは水彩画を、その後油彩で風景や静物を描くようになった。
祖母、父母の死亡にともない独立し、現在はヘルパーの助けのもとに、重度障がい者の身でありながらも一人暮らしをしている。
1999年に「私の平和の絵」という主題に基づいて描いた希望の虹の絵が、翌年リヒテンシュタイン侯国の切手として採用された。

描く恵みと力

 口で描くことが神様からの贈物として与えられ、そして私の仕事になって長い年月が過ぎてきました。絵を描けることは私にとって幸せなことだと思っていますが、描くことに意欲的に取り組めるときもあれば、ときに描くことが重荷に思えることもあります。何を描いたらいいだろうかと考え込み、また、どう描いたらよいかわからなくなり、筆が進まなくなることもあります。
 そんな時、本当に小さなことでも、一歩足を踏み出してみます。鉛筆の短い線を引き、筆先の小さな色の一点だけでも置いてみます。そんな小さな一歩を踏み出してみると、そこからそれまでには見えなかったものが見えてくることがあります。
 描くことは孤独で忍耐のいる作業ではありますが、協会の活動によって、描かれた絵を多くの人たちに見てもらう機会が与えられ、また、文具などの商品となって多くの人たちの手もとで使われていることを思うとき、人の心から心へと伝わっていくやさしい波の広がりのようなものを感じることができます。
 そしてまた、口と足で描いている仲間の働きを知り、励まされ、描く意欲が与えられます。
 今の多様化したニーズの中で、描くものにも変化を求められることはありますが、自ら新しいものを作り出していく思いを持ちつつ、変わってはならない大切なものから眼をそらさずに描いていきたいと思っています。

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