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小川 良治  長野県  口で描いた

1938年3月長野県生まれ。

調理人の修行を7年間続けていたが、22歳の時に進行性筋萎縮症という原因も治療法もわからない難病に冒され、寝たきり生活となった。

入院中に口で文字を書く訓練を始め、絵も描くようになり、水彩から油彩へと広がっていった。

1日に1枚のスケッチを必ず描いた。

継続は力也が信条だった。

1996年1月没。

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苦闘から

私は22歳になるまで病気とか怪我をしたことがありませんでした。小、中学校では皆勤賞を頂きました。家が貧しく、早く一人前になりたいと、卒業と同時に調理人の修行に入りました。

修行を続けて7年目、ある日突然、病が私を襲いました。進行性筋委縮症という原因も治療法もわからない難病でした。それ以来、病は進み、全身の筋肉を破壊し続けています。歩けず、身動きできず、指一本ままならない体になりました。12年間、毎日私は天井を眺めて暮しました。

 

ある日、一本の鉛筆を目にして、何かかけないだろうかと口にくわえ、紙の上をこすってみました。歪んだ点のようなものが書けました。飽きずに毎日続けてすると大きなものですが、字の形になってきました。色数を増やして小さな花を描いてみました。やがて絵が楽しみとなり、絵ばかり描き続けました。するとどうでしょう。いつの間にか字も書けるようになっていたのです。この時の感動は一生忘れません。

 

水彩から油彩へ、何一つ望めないと諦めていた私の心は弾み、張り裂けるほど夢が広がっていきました。協会のことは何年も前から知っていました。私の絵を皆さまに見てもらえないか。この絵が私の自立への力にならないか。そんな思いがついに叶えられそうです。私は現在施設におります。口ですることは限度があります。しかし、道具を工夫し、口を手にして自立を目指して頑張っていきたいと考えています。

 

 

上記は小川 良治が1990年に書きました。

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